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2018年07月02日

進学を叶えてくれた吉田育英会

小柳 めぐみ マスター21/2005年度採用 奨学期間:2005年4月~2007年3月
奨学期間中の在籍大学:東京理科大学大学院理学研究科 理数教育専攻 修士課程
現所属:神奈川大学附属中・高等学校 教諭

(こやなぎ めぐみ)
2007年3月 東京理科大学大学院 理学研究科 理数教育専攻 修士課程 修了
2007年4月より 神奈川大学附属中・高等学校 教諭として勤務

吉田育英会に採用されたことにより、大学院進学を諦めずに済んだばかりか、多くの方と出会い、活動の幅を広げることができました。修士課程修了後は教職に就き、学生時代の経験を例に、自ら行動し努力すれば道は開けると生徒たちに伝えています。


「吉田育英会 設立50年の集い」にて
写真左から金田評議員、猿丸評議員、筆者、吉田理事長

 マスター21に採用されたときは、とても嬉しい気持ちと信じられない思いでいっぱいでした。高校時より貸与の奨学金やアルバイトで工面してきたので、大学院の学費分を給付していただけることは非常に有り難いことでした。その一方で、自然科学分野の大学院進学者は研究職を目指すことが多く、教員志望の私などはとても採用していただけるとは思っていませんでした。のちに、研究・開発職だけでなく、多様な分野での活躍を吉田育英会は願ってくれていると知り、その懐の大きさに触れ、自分の考えの狭さが恥ずかしくなったものです。


 採用後は、毎年隅田川花火大会にお招きいただき、甘んじて参加させていただいております。他大学の優秀な奨学生と交流し、異分野を垣間見ることができたり、似たような苦労をしていることを知って励まされたりしました。ときには国際プログラムの方ともお話しすることができ、貴重な経験となっております。また、修了10年を迎えた2017年には、育英会からお招きいただき、長らく会えずにいた同期と近況報告をしあうことができました。折しも同じ2017年に「設立50年の集い」にご招待いただき、創業者であられる吉田忠雄様の「善の巡環」の事業哲学に触れ、また、今やっと社会が検討している給付制奨学金について1986年から手掛けていらっしゃることなどを知り、大変胸が熱くなりました。


 進学した修士課程では、日下部慧研究室(当時)に所属し、金属錯体を利用した大気中一酸化窒素検出の教材開発に関する研究を行いました。国立教育政策研究所(現 桐蔭横浜大学)の松原静郎先生との共同研究でしたので、理学と教育学の両方の観点から研究を進めることができました。同じ専攻には、数学・情報・理科の教職を目指す学生と現職教諭が集まっていましたから、お互い大変刺激になったのは言うまでもありません。私自身、平日には中学校・高等学校で非常勤講師、土曜には武蔵野市教育委員会主催のサイエンスクラブで補助講師として勤めながら学生生活を過ごしました。基本的に朝7時過ぎに出勤して「先生」と呼ばれ、お昼過ぎに院生室に着くと「学生」になり、閉門の23時まで研究室にいました。振り返れば非常にハードだったと思いますが、大切な仲間と貴重な経験を得ることができました。



夏休み子ども化学実験ショー
「なぜナニ化学クイズショー」での実験演示

実際に実験をして答え合わせをするとき、
参加者の小学生たちの知的好奇心に溢れる
キラキラした瞳に癒されます。

 在学中より日本基礎化学教育学会に所属し、様々な実験の手法や教育現場の様子を教えていただき、知見を深めることができました。その先生方からご紹介いただき、現在は教壇に立つ傍ら化学の普及活動を行っております。日本化学会では、クイズショー小委員会(夏休み子ども化学実験ショーなどでのステージイベント等)、化学だいすきクラブ小委員会(中高生向け冊子発行や夏のイベント)、学会誌「化学と教育」誌の講座小委員会などの活動を広げてまいりました。また、2013年放送分よりNHK Eテレ「高校講座 化学基礎」の講師として監修・出演をさせていただいております。一方、実教出版の教科書等の執筆やデジタルコンテンツの製作に携わっています。これらのいずれの活動においても、限られた時間やページ数の中で、いかに無駄なく正確に分かりやすく伝えるか内容を吟味するので、大変勉強になります。対象とする小・中・高校生等が化学(科学)に親しみをもち、学習の手助けになればとても嬉しく思います。校務の合間を縫って準備をするのは何かと大変ですが、ご一緒させていただいている高校や大学の先生方から、他校の様子を教えていただいたり専門的な視点から教材を見つめ直したりすることができ、学校教育に還元することができます。


 修士課程修了後は、現職に就き、中学理科1分野(物理と化学)および高校化学を指導しています。前述の学生時代や化学の普及活動を通じて得たものを生徒にフィードバックし、科学に対する興味・関心を引き出せるよう教材研究に励んでおります。専任教諭になると、学校行事や部活動などを通じて授業とは違った生徒の姿をうかがうことができます。様々な場面で生徒の活躍する様子を見ると、今後の成長がとても楽しみです。進路指導では折に触れて、吉田育英会に採用が決まったので進学できたことを例示し、自ら行動し努力すれば道は開けると生徒たちに伝えています。


 このように、吉田育英会は、大学進学のサポートだけでなく、在学中から卒業後も本当に温かく見守ってくださいます。採用いただいたことにより、大学院進学を諦めずに済んだばかりか、高校在学時や留学時に吉田育英会奨学生だった大先輩を始め、同期、現役生など、多くの方との出会い、研究会や執筆の活動など自分の幅を広げることができ、深く感謝しております。これから大学院を目指す方には、充実した研究生活となりますよう願っております。



四季折々の花が咲き誇る自然豊かな勤務校
生徒一人当たりの面積は約44坪という広大な敷地の中、生徒はのびのび成長していきます。

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