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ブログ

2018年01月11日

研究者に少しでも興味のある人へ~日々の研究生活で得た教訓~

廣部 大地 ドクター21/2015年度採用 奨学期間:2015年4月~2018年3月
奨学期間中の在籍大学:東北大学大学院 理学研究科物理学専攻 博士課程

(ひろべ だいち)
2013年 東北大学 理学部物理学科 卒業
2015年 東北大学大学院 理学研究科物理学専攻 修士課程修了
2018年 東北大学大学院 理学研究科物理学専攻 博士課程修了
2018年 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 分子科学研究所
    協奏分子システム研究センター 機能分子システム創成研究部門 助教(予定)

教科書を読む立場から教科書に新たな1ページを加える立場へ歩を進めるという意気込みを忘れないでほしいです。あなた自身の研究、あるいはそこから派生した関連研究が学問や実社会の場で花開くかもしれません。教科書を超えましょう。


国際ワークショップ招待講演で訪れたサン・セバスティアン (スペイン)のビーチ

0.はじめに
 はじめまして、廣部大地と申します。私は博士課程在学中に吉田育英会からサポートをいただき、博士課程を修了した2018年から分子科学研究所で助教として勤めます。まずはこのブログ記事にアクセスしてくださり、ありがとうございます。まちがってクリックしてしまったという方もいるかもしれませんが、まずはさっと目を通していただければ幸いです。興味がわいたら、是非そのままお読みください。日々の研究活動で得た教訓をいくつかお届けします。「なんか偉そうな奴だな」と思って興味がそがれてしまったら、今回はご縁がなかったということで前のページへお戻りください。ただ、吉田育英会はそんな学生も全力でサポートしてくれます。その懐の深さが伝わったのなら万々歳。こうして私のブログ記事は読まれようが読まれまいが、読者の皆様と吉田育英会の双方に利するところがあります(偉そうですみません)。
 曲がりなりにも修士・博士課程で5年間の研究生活を過ごしました。このブログ記事を読む方の中には、私と同じく研究者を志す人もいらっしゃることでしょう。そのような方を念頭に置きつつ、理系大学院生に向けて研究生活で得た教訓を記します。

1.精神衛生のために、時間に余裕を持って行動する
 締め切り間近の火事場の馬鹿力を当てにしないでください。当てにする人は往々にして心を痛めてしまいがちです(私もその一人でした)。時間に余裕を持って毎日コツコツすすめましょう。たとえば書類提出なら、締め切り一週間前から三日前までに提出可能なレベルまで仕上げてしまいましょう。これを実行しようとすると、スケジュール帳を見直し、日割りでスケジュールを立てて粛々とすすめる必要があります。ちょっと面倒ですが、締め切り間近のハードスケジュールのことを思えばなんのその。ちなみに私は博士論文を執筆する際に、平日に5ページ以上書くことを課し、提出期限の一ヶ月前に終えました。一方、修士論文は火事場の馬鹿力で執筆し、提出日の早朝まで作業しました。某エナジードリンクを見ると、その悪夢が蘇ります。

2.突き抜けるために、圧倒的な量をこなす
 私が高校生の頃、先輩で頭一つ抜きん出た秀才がいました(のちに東大医学部へ入学しました)。その人は、圧倒的な量をこなすことの重要性を説いていました。たしかにその人の勉強時間と集中力はとんでもなかったと記憶しています。
 私が大学生の頃、物理の理解で頭一つ抜きん出た同期がいました(修士課程のうちに単著論文を発表していたと思います)。その人は、高校生のうちに学部レベルの物理まで一気に勉強したと言っていました。
 私が大学院生の頃、研究室の掃除をしていたところ、テキストのコピーが入った段ボール箱を大量に見つけました。すべて、教授が学生の頃に使ったものでした。圧倒的学力が強みとその教授は自認しています。
 何かに秀でたいと思ったら、時間のあるうちに圧倒的な量をこなしましょう。しかも継続的に。昨日やったから今日やらなくてもいいという類ではありません(歯磨きと同じです)。私自身も圧倒的な量をこなそうと思い、大学入学から現在に至るまで物理と英語にそれぞれ一万時間超を費やしました。学部時代には、本を千冊ほど嗜みました。参考までに。

3.“正しく”驚くために、深く深く考える ※とくに研究者を志す学生の皆様へ
 皆様は少しずつしかし確実に、教科書を読む立場から教科書に新たな1ページを加える立場へ歩を進めます。そういう意気込みを忘れないでほしいです。あなた自身の研究、あるいはそこから派生した関連研究が学問や実社会の場で花開くかもしれません。大きな発見は得てして偶然です。偶然の幸運に出くわしたとき、それにちゃんと驚いてserendipityをものにする必要があります。先駆者に鑑みて、そのためには相応の学識や論理力が必要です。理解にとどまらず、必然性を感じられるほど日頃から徹底的に考えましょう。そういう性分の人に出くわしたら、ぜひ見て学びましょう。
 一つ考えるコツを。その道の名著と呼ばれる教科書を開き、その目次を眺めてください。なぜそのトピックが選ばれ、なぜその順序で並べられたのでしょう?考えてみてください。この作業は深い洞察の誘発剤になると思います。事実や概念を重要度別に取捨選択し階層化しようと試みるとき、あなたの研究者としての知的パフォーマンスは向上しているはずです。教科書を超えましょう。

終わりに
 吉田育英会ファミリーの皆様は、人格も学業も優れた方ばかりです。文理を問わず幅広い分野の最前線で活躍するOBやOGも大勢いらっしゃいます。そのような方々に触発され、自分の考えに幅と深さを与えることができました。ドクター21奨学生であったことを誇りに思います。

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