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ブログ

2011年09月02日

ドイツから後輩の皆さんへのメッセージ

内田 靖哉 派遣留学プログラム/2006年度採用 奨学期間: 2006年4月~2008年2月
応募時の在籍大学: 北陸先端科学技術大学院大学
奨学期間中の在籍機関: マックス・プランク研究所(ドイツ連邦共和国ヘッセン州バードナウハイム市)
現所属: 同上

(うちだ しずか) 1998年、Creighton University (Nebraska, U.S.A.) Bachelor of Science (Biology and Ancient Greek) 修了。2003年、北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士前期課程(Bioinformatics) 修了。2007年、北陸先端科学技術大学院大学 材料科学研究科 博士後期課程(Molecular Biology) 修了、現在、Max-Planck-Institute for Heart and Lung Research, Department of Cardiac Development and Remodelling, Group Leader。

iPS細胞の山中教授や2年連続ホットペーパー数第一位の審良教授のように、日本の研究レベルは高いですが、両先生も一度は留学を経験しています。奨学生には両先生を超える成果を得て、「日本」というユニークな国を活性化してほしい。


Uchidaラボのメンバー

○自己紹介
私は、幹細胞(adult stem cells)と心筋再生の研究をしたいと思い、北陸先端科学技術大学院大学(通称、ジャイスト (JAIST))の塚原俊文教授の研究室( http://www.jaist.ac.jp/nmcenter/labs/tsukahara-www/ )に博士後期課程の学生として入り、「生もの」を扱う研究を2004年にスタートしました。充実した学生および研究生活でしたが、2年後の2006年に、福井大学大学院工学研究科システム設計工学専攻をしていた私の妻でドイツ人であるペトラが博士後期課程を修了するということもあり、ドイツにて研究を行いと考えました。そこで、Myf5と呼ばれる筋分化調節因子の機能解析をし、幹細胞研究にて最先端の研究を行なっているThomas Braun教授にEメールを書きました。当時、Braun教授は、ペトラの実家であるザクセン=アンハルト州のハレ市にあるMartin-Luther Universitätにて教鞭をとっていました。私が問い合わせたときは、Max-Planck研究所の所長(Managing Director)としての職を引き受けたときでした。Braun教授は給料を出すとの事でしたが、もし自分で奨学金を探して、しかも研究費も持って来たら前例がないと言われたので、吉田育英会の「日本人派遣留学生プログラム」に応募し、こちらに博士課程の学生として来ました。現在は、「グループリーダー」として学生の指導を行なっています。

○研究生活を通じて考えたことや感じたこと
現在までにいろいろな分野(例えば、バイオインフォマテックス、分子生物学、発生生物学)を渡り歩いてきましたが、マウスを扱う研究が一番時間がかかるということです。特に、現在行なっている「Lineage Tracing」の研究は、2007年4月にアメリカからトランスジェニックマウスを頂き、スタートしました。始めの1年半はひたすらマウスを掛け合わせるのみで結果はなく、悩みましたが、今は論文投稿にこぎつけました。このプロジェクトはすごくうまくいき、現在、博士課程の学生を募集中です。

○日常生活上の体験談
長女が生後2ヶ月の時に、こちらに引っ越しましたが、妻の両親や兄の助けを借りて、何とかすぐに生活が始めれるようになりました。その2年後には長男が生まれ、1年後には妻が仕事を始めました。育児、仕事の両立のほかに、学生の教育もあり、忙しい日々でした。こちらの研究所では、所長で私のボスであるBraun教授の方針から、研究時間に制限はなく(他の研究所や大学では、安全上の理由から実験できる時間が限られているところもあります。)、朝4時に研究室に入り、午後1時には帰宅し、子供の面倒を見ていました。妻が仕事から帰宅後は、コンピュータで仕事をしていました。かなり大変でしたが、「時間」の大切さを実感できた時期でもありました。

○近況の報告
現在は、「グループリーダー」として、4人の博士課程の学生と1人の修士課程の学生を指導しています。Wet(生物実験)とDry(コンピューター)を組み合わせたユニークな研究を行なっています。特に、臓器発生に関係する機能未知の遺伝子のアノテーション付け(機能解析)に力を入れています。この根底にあるのは、臓器発生のメカニズムがわかることにより、成人の体に散らばる幹細胞をある特定の細胞に分化させることができるのではないかということです。このゴールを達成するために、コンピュータとバイオインフォマテックスの手法を屈指し、世界中のデータベースやウェブサイト等にて公開されているいろいろなデータ(例えば、マイクロアレイ)から知識(Knowledge)を抽出し(Albert Einsteinの残した言葉「Information is not knowledge.」に代表されるように、実験により測定されたデータはそのままではただの数字やイメージのみなので)、仮説を立てるところから始めます。この仮説を検証するために、マウスのES細胞とshRNAを用いたin vitroの実験やゼブラフィッシュとMorpholinoを用いたin vivoの実験を行なっています。これらの実験から得た遺伝子群を、adult stem cellsをターゲットにラベルしたlineage tracing mouse (tet-Cre and reporter lines)を使用して、実際に仮説が正しかったかどうかを検証しています。現在、この研究をまとめた本を書いています。詳しくはこちらをご覧ください。http://www.mpi-hlr.de/index.php?id=463&L=1

○将来に向けた抱負
独立したラボを持つこと。

○他の奨学生や後輩に向けたメッセージ
iPS細胞の山中教授や2年連続ホットペーパー数第一位に輝いた審良教授に代表されるように、日本の研究のレベルは世界的にかなり高いです。上記の両先生に共通していることは、一度は留学を経験されているということです。アメリカと違い、ドイツでは自分で奨学金を探してくるというのは大変珍しく、さらに、それ自体がステータスのように見られています。これから奨学金に応募される方または奨学生も上記の両先生を超えるような成果を得て、「日本」というユニークな国を活性化してください。

(写真:Uchidaラボのメンバー)
前列: Katharina Jenniches, Piera De Gaspari, David John
後列: 寺西瑞恵、内田靖哉、Pascal Gellert
詳しくはラボのURLをご覧ください。 http://www.mpi-hlr.de/index.php?id=455&L=1

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