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ブログ

2014年10月21日

5年間の米国大学院留学を終えて

茂木 快治 派遣留学プログラム/2010年度採用 奨学期間: 2010年8月~2013年7月
応募時の在籍大学: 早稲田大学大学院経済学研究科
奨学期間中の在籍機関: ノースカロライナ大学チャペルヒル校(米国)経済学部博士課程
現所属: 早稲田大学政治経済学術院助手

(もてぎ かいじ)埼玉県本庄市出身。2008年3月、早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業。同年4月に早稲田大学経済学研究科修士1年コースへ進学。2009年3月、同課程を修了。同年8月、ノースカロライナ大学チャペルヒル校経済学部博士課程に入学。2014年5月にDoctor of Philosophy in Economics を取得。博士論文の題目は ”Granger Causality in Mixed Frequency Time Series”. 2014年6月から2014年10月現在に至るまで早稲田大学政治経済学術院助手として勤務。専門は計量経済学(特に時系列分析)。個人ウェブサイトは http://www.aoni.waseda.jp/motegi/

この記事を読んで下さった方たちの中には、6, 7年前の私のように大学院留学を検討中の方もいらっしゃると推測します。留学は多大な困難を伴いますが、その一方で得るものも多いので、前向きに検討を進めて頂ければと思います。


 この度、吉田育英会 〈日本人派遣留学プログラム〉 奨学生OBとしてブログ寄稿の機会を頂き、大変光栄に考えています。私は2009年8月から2014年5月まで米ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)の経済学部博士課程で学びました。その間、〈日本人派遣留学プログラム〉 奨学金を受給していました。吉田育英会の皆様の温かいご支援がなければ留学を完遂することはできませんでしたので、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 さて、この機会に5年間の留学生活を振り返り、留学して良かったと実感する部分をまとめたいと思います。第一に、日本では今のところあまり知られていない最新の分析手法を学ぶことができました。例えば日本の失業率のデータと国内総生産(gross domestic product, GDP)のデータを考えますと、失業率は毎月1回公表されるのに対してGDPは3か月に1回しか公表されません。このように公表頻度の異なる経済変数の相互関係を分析する場合、従来の手法は公表頻度の高い方のデータを集計化して公表頻度の低い方に揃えてから分析を始めていました。今回の例ですと、毎月公表される失業率の3か月ごとの平均値を計算して、3か月おきの失業率とGDPのデータを分析対象とするのです。
 このような従来型の手法は公表頻度の高い方のデータを十分に活用しきれていないという問題点があり、その結果として分析の精度が下がります。ここ10年ほどの欧米の経済学会では、観測頻度が異なっていてもデータの集計化を行わずに最大限の分析精度を実現する新手法が発展しています。私はこの分野の第一人者であるエリック・ガイセルズ教授に師事し、様々な知識やスキルを伝授して頂きました。留学の結果、日本でなかなか学ぶことのできない研究分野と巡り合えて幸運に思います。

 第二に、公私ともに米国ならではの楽しい思い出もできました。国際学会で参加者から好意的なコメントや有意義なご指摘を頂いたとき、米国出身の友人と魚釣りや将棋をしたとき、ティーチング・アシスタントとして指導している教え子の学問的な成長を感じたときなど、留学しなければ味わえない喜びがありました。

 第三に、逆説的ではありますが、留学をしたことによって母国の良さに気付けたという側面もあります。生まれてから留学開始までずっと地元に住んでいたため、えてして日本の良さを明確に認識できていませんでした。自分にとってお馴染みの食べ物がすぐに手に入ること、電話口で相手が何を言っているのか簡単に理解できること、日本語の本や雑誌がたくさんあることなど、ある意味当たり前だったことが今では非常にありがたく思えます。このように、留学を通じて多少なりとも物事の捉え方が変化したと思います。

 この記事を読んで下さった方たちの中には、6, 7年前の私のように大学院留学を検討中の方もいらっしゃると推測します。留学は多大な困難を伴いますが、その一方で得るものも多いので、前向きに検討を進めて頂ければと思います。私自身もより一層努力して、経済学の発展にわずかでも貢献したいと考えています。吉田育英会の皆様、今後とも宜しくご指導下さい。


最近の学会発表で使用したポスター。2014年9月。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)の学位授与式。2014年5月。

UNC経済学部の校舎。春には2本の立派な桜が咲きます。2014年4月。

記念すべき海外最初の一匹。ノースカロライナ州フォールズ湖。2011年12月。

UNCのキャンパスにはリスが多数生息しています。2010年5月頃。

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