印刷する

ブログ

2011年09月02日

カルガリー大学に留学して

田中 康平 派遣留学プログラム/2010年度採用 奨学期間: 2010年5月~現在
応募時の在籍大学: 北海道大学大学院理学院
奨学期間中の在籍大学: カルガリー大学(カナダ)地質学科修士課程

(たなか こうへい) 北海道大学理学部卒。2010年5月よりカナダ、カルガリー大学地質学科、修士課程在学中。恐竜を含む主竜類の繁殖生態とその進化をテーマに研究を行っている。

カナダの大学では学生も教員も本当に楽しんで研究を行っています。好きな研究だけに没頭できるのは大学院生の特権ではないでしょうか。自分の最も興味のある研究機関で経験を積むことは大変有意義なことだと思っています。


私は2010年5月から、カナダ、アルバータ州にあるカルガリー大学の修士課程に在籍し、古脊椎動物の研究を行っています。西方にカナディアン・ロッキーを臨み、広大な平原の広がるアルバータは、石油等の天然資源にも恵まれた自然の豊かな地域です。また、カナダでは「人種のモザイク」と呼ばれるほど多種多様な人々が混在しています。日本とは風土も人種も異なるこの地で、研究に関することはもちろんのこと、留学を通して多くの刺激を受けて生活しています。

まず私が留学を開始して最初に驚いたことは、大学を構成している学生の多様さです。学生の国籍や年齢は様々で、理系学部の女子学生の多さにも驚きました。誰がカナダ人で誰が留学生なのかははっきりわかりませんし、あまり問題でもありません。留学生だからといって変に気を使うこともなく、大学に溶け込みやすい雰囲気であったのは私にとってありがたいことでした。

カナダの大学では、学生も教員も本当に楽しんで研究を行っているように感じます。これはすごく良い環境だと思います。自ら恐竜の発掘調査プロジェクトを立ち上げている学生もいますし、私の指導教官は、「こんなにすごい化石が見つかった!」と興奮気味に私に説明してくれました。論文の輪読会ともなれば、毎回熱い議論が交わされます。この知的好奇心の高さが互いを刺激し合い、良い研究を生み出しているのではないかと思います。

研究生活を続けていると、頭の中が研究一色になりがちですが、自然の好きな私にとって、カナダには気分をリフレッシュさせてくれる魅力がたくさんあります。朝、雪の上に点々と続くウサギの足跡や、真夏の淡いオーロラを見つけると、本当に嬉しくなります。また、アルバータ州南部に点在するバッドランドと呼ばれる奇怪な岩石と地層のつくりだす荒涼とした大地は、まるでどこか違う惑星を訪れているかのような錯覚に陥ります。このバッドランドでは白亜紀後期の地層が露出し、様々な脊椎動物化石が多数発見されていますので、古生物の研究者にとっては一番の自然の魅力かもしれません。

最後に、これは日本でも同じだと思いますが、就職してしまうと様々な仕事が増え、研究そのものに専念することが難しくなってしまうように感じます。好きな研究だけに没頭できるのは大学院生の特権ではないでしょうか。私は、留学が必ずしも必要だとは思いませんが、大学院生の間に自分の最も興味のある研究機関で経験を積むことは大変有意義なことだと思っています。私にとってカルガリー大学での古脊椎動物学研究は非常に有難いことです。このような機会を与えてくださっている吉田育英会の皆様にお礼を申し上げるとともに、今後多くの学生の方々が国内外で活躍されることを願っています。


カルガリー大学キャンパス

アルバータ州南部のバッドランド

本記事はコメントが許可されておりません。

※寄稿者の状況および記事の内容は、特に記載のない限り、掲載日時点のものです。