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ブログ

2015年07月14日

マスター21奨学生として学んだこと、感じたこと

柚原 誠 マスター21/2003年度採用 奨学期間: 2003年4月~2005年3月
奨学期間中の在籍大学: 筑波大学大学院システム情報工学研究科修士課程
現所属: 株式会社荏原製作所

(ゆはら まこと)茨城県那珂郡出身。2003年3月、筑波大学第三学群工学システム学類卒業。2005年3月、筑波大学大学院システム情報工学研究科構造エネルギー工学専攻にて修士取得。在学中はMHD(電磁流体)発電機の数値解析を行っていました。2005年4月、株式会社荏原製作所入社、現在に至る(2008年9月から3年間、米国子会社のEbara International Corporationに出向)。同社入社以来、低温液化ガス用ポンプの設計業務に従事しています。

人の役に立ちたいという想いと、大学院で好きになった流体技術に関わる仕事をしたいという想いから、修士取得後に就職することを選びました。お客様から「柚原さんを本物件の設計担当にしてほしい」と“逆指名”を受けた時は、人の役に立ちたいという原点の想いを実感できたようでとても嬉しかったです。

私は2003年度から2年間マスター21奨学生として吉田育英会よりご支援を賜りました。社会人になり10年が経過し、このたび吉田育英会のウェブサイトに寄稿する機会を頂きました。一OB/社会人として、現役奨学生の皆様へメッセージを送りたいと思います。

◎奨学生に選ばれたということ
マスター21奨学生に選ばれるということは、経済的な面で大きなサポートを得られるのはもちろんですが、自分が学部時代に頑張ってきたことや大学院に進む上での熱い想いを、客観的に認めていただいたということだと思います。
私はエネルギー問題に興味を持って大学に入り、できるだけ知識を吸収して自分を成長させたい・人の役に立てるようになりたいとの思いで、日々授業に出て、わからないところは自分なりに納得できるよう調べるという、いわば地味な学生生活でした。奨学生に選んで頂いたとき、学部時代の学費はアルバイトで賄っていましたので大学院では経済的な心配をせずに研究に専念させていただけることに感謝すると同時に、学部時代の頑張りや想いについて評価して頂いたと感じて大きな自信になりました。自分の頑張りを客観的に認めていただく機会はそう多くはないと思います。現役の奨学生の皆様も、育英会への感謝とともに、頑張ってきた自分に目一杯自信を持って、今後の研究活動に邁進してください!

◎初心に帰るということ(大学院時代)
大学院では、奨学生に選んで頂いたにもかかわらず劣等生で、どちらかといえば悩みの多い2年間でした。学部時代と違って、研究には他人が決めた答えやゴールがなく、自分で問題点を見つけて研究を進めていく必要があります。自分が何のために研究しているのか、どの立ち位置にいるのか、が見えなくて悩んでいたのだと思います。
そんな時は、初心に帰るよう心がけていました。何を思って大学を選んで受験したのか、大学院に入るときにどういう想いであったのか等を、振り返るようにしていました。原点の想いを思い出してやる気を出すとともに、未来のあるべき自分を再確認することで現状の立ち位置も見えた気がします。奨学生に応募するときの書類に学部時代の活動内容や想いを整理していたことも、原点を振り返る上で大きな助けになりました。
また、吉田育英会は奨学生の交流に力を入れていると感じました。私が奨学生の頃も、奨学生の仲間が集まる懇親会が何度か開かれ、YKK60ビルにお邪魔しました。他の仲間が頑張っている様子を聞き、刺激を受け、自分も頑張らなくてはと励みにしていました。


国際会議の発表の場にて(35th AIAA Plasmadynamics and Lasers Conference於・米国オレゴン州ポートランド)

大学院では、MHD発電機という超音速プラズマ流を利用した発電機を対象に、電磁流体解析を行いました。指導教授の先生からは、「国際的な経験・スキルを積むことを考えなさい」とよく指導されました。研究成果は未熟でしたが、先生のお力添えもあり、修士2年の時にアメリカでの国際会議で発表するという、とても貴重な経験もさせていただきました。


◎いつまでも若くはないということ(社会人になって)
大学院の研究テーマは流体力学と電磁気学という異質の2学問に根ざしており、特に流体力学が好きになりました。人の役に立ちたい(役に立つにはどうすればいいか)という想いと流体技術に関わる仕事をしたいという想いから、修士取得後に就職することを選び、現在の勤務先に入社をしました。入社後は、環境に優しいエネルギーといわれるLNG(液化天然ガス)を加圧・移送するポンプの設計業務にあたっています。天然ガスは約-160℃の低温液体(LNG)の状態で日本に運ばれ、最終的に都市ガスや火力発電の燃料となり国のエネルギー需要を基幹的に支えています。私の会社では主にガス基地や発電プラント等の新設/更新プロジェクト向けに注文を受け、案件ごとにお客様が必要とするポンプを設計しています。お客様や工場とやり取りしながら自分が設計した製品が、お客様の設備に無事納入され所定通り稼働するのを見るのがこの仕事のやりがいです。入社以来10年間、LNGポンプ“マニア”になれるよう、製品知識や技術を勉強しながら仕事を進めてきました。2008年から3年間はアメリカの子会社に赴任し経験を積むというチャンスももらいました。最近、注文を受けたお客様から「柚原さんを本物件の設計担当にしてほしい」と、冗談ですが“逆指名”を受けたことがありました。このようにお客様から声をかけていただけるのは技術者冥利に尽きることであり、人の役に立ちたいという原点の想いを実感できたようでとても嬉しかったです。


米国赴任中の一コマ(試験が成功して)

このようにこれまで学生時代から入社後10年の間は、とにかく自分を成長させよう・高めようという指向でいました。裏を返して言えば自分が“マニア”としてフル稼働で仕事を進めようという姿勢でした。しかし、入社10年経ち年齢も30代半ばとなり、責任や業務範囲も広がる中、自分がフル稼働しようという仕事の進め方には限界があります。後輩を育成し、他部署を巻き込んで協力を得ながら仕事を進められるように、マインドを変える必要性を痛感しています。これは、大学や企業で研究職をされている方も同じで、自分が第一線に立って研究を進められるのも30代半ばくらいまでであると思います。年を取って初めて分かりますが年を取るのはあっという間です。現役の奨学生の皆様も、自分が研究できる時間には限りがあると肝に銘じ、まさに“今”“時間”を大切にして、研究に打ち込んでいただけたらと思います。

◎最後に
マスター21奨学生に採用して頂いて過ごした大学院生活が、現在の自分の基礎になっています。また、吉田育英会をはじめ、私はこれまで周囲の様々な方に支えていただいたのだと、この記事を書いていて改めて思います。つたない長文記事で恐縮ですが、現役奨学生の皆様に何か伝わりましたら一OBとして大変幸いです。皆様のご活躍を祈念しております。頑張ってください!

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